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80s
パイロットのパートナーは街のスタンダードに
MA-1は1954年にB-15の後継として登場したアメリカ空軍のフライトジャケット。耐久性・防風性に優れたナイロン製シェル、リブ襟、オレンジ裏地などのディテールが特徴。冷戦期に広く採用され、現在もミリタリーファッションの定番。ヴィンテージ市場では初期モデルが高値で取引される。
80sの判別
概要
- MA-1はアメリカ空軍(USAF)のフライトジャケットで、1954年(*1)にB-15の後継として登場した
- 第二次世界大戦後、陸軍航空隊(USAAF)から独立したUSAFがパイロット向けに開発したナイロン製ジャケット
- 寒冷地での防寒性を考慮しながらも、機内での動きを妨げないシンプルなデザインが特徴
B-15からの変更点
- MA-1は、B-15フライトジャケットの後継モデルとして登場

- B-15では採用されていた ムートン襟が廃止 され、襟元はリブ仕様に変更(ヘルメットの装着を容易にするため)
- アウターシェルの素材がコットン製から ナイロン製 に変更され、耐久性・防風性・防水性が向上
- 酸素マスクやヘッドセットのコードを固定するための オキシジェンタブやICSコードループ が初期型に採用されるも、後のモデルでは排除された

オキシジェンタブ Image by acorn

ICSコードループ Image by acorn
B-15において襟がボアからニットに変更された理由
- B-15フライトジャケットの初期型では、襟にボア(ムートンファー)が採用されていた

ボア Image by acorn
- 第二次世界大戦中のパイロット用ヘルメットは、皮革や布製で頭に密着するソフトシェルタイプであり、主にイヤホン装備や頭部の保温を目的としていた
- しかし、戦後になると航空機の高速化が進み、パイロットのヘルメットも耐衝撃性を重視したハードシェルタイプへと移行していった。
- ボア襟は首の保温性に優れていたが、ハードシェルヘルメットを装着した際に首元の動きを妨げるという問題が発生した
- そのため、B-15の改良過程で、ボア襟は廃止され、柔軟性のあるニットリブ襟へと変更された

ニットリブ襟 Image by acorn
- この変更により、パイロットはヘルメットを装着した状態でもスムーズに首を動かすことが可能となった。
- この襟の仕様変更は、MA-1にも引き継がれ、最終的にB-15の後継モデルであるMA-1は、誕生当初からニットリブ襟を標準装備することとなった
USAAFからUSAFへの変更の影響
- 1947年にUSAAFがUSAFとして独立 したことに伴い、フライトジャケットのデザインや仕様も変更
- 米陸軍航空隊時代のフライトジャケットは オリーブドラブやカーキ の色合いが多かったが、MA-1では セージグリーン が主流になった(森林地帯でのカモフラージュから、航空機運用に適した色調へ)
- リバーシブル仕様の オレンジ裏地 は、遭難時の視認性向上を目的として追加された(後期型の特徴)
ゾーンタイプと用途
- 米軍のフライトジャケットは「ゾーンタイプ」と呼ばれる温度帯によって分類される
- ライトゾーン(摂氏10度~30度)
- インターミディエイトゾーン(摂氏-10度~10度) ← MA-1が該当
- ヘビーゾーン(摂氏-10度~-30度)
- MA-1は最も活動機会の多いインターミディエイトゾーン向けに開発され、完成度の高さからパイロットだけでなくグランドクルーにも採用された
ディテール
- アウターシェル:耐久性・防風性・防水性を向上させるため、ナイロン製 を採用(B-15のコットン製から変更)
- ライニング(裏地): 初期型は ウールパイル(ウール58%・コットン42%) を使用し、高い防寒性を実現 、後期型は ポリエステル綿 に変更され、軽量化と速乾性が向上

ウールパイル Image by acorn
- ユーティリティポケット(シガレットポケット):左袖に配置され、ジッパー付きでタバコケースほどの大きさ。4本のペンを収納できる仕様で、ペン先で生地が破れないよう ペンキャッププロテクター が装備されている。

ユーティリティポケット Image by acorn
- メインポケット:左右の腰に配置されたポケット。初期のMA-1は フラップ無しで、同時期のL-2B(ライトゾーン用ジャケット)と判別しやすくしていた。MIL-J-8279E以降は、ポケットの中の物が落ちにくいよう フラップ付き に変更。
- ポケットの袋地:ポケットの内側は レーヨン65%、ウール35%のダブルフェイス生地 を使用。手を入れた際に暖が取れるよう、ポケット内部はウール側を使用。L-2Bでは動きやすさを考慮し、レーヨン側をライニングとして使用していた。
- オキシジェンタブ:フロントジッパー脇の左身頃中央部に取り付けられたナイロン製タブ。酸素マスクのホースをクリップで固定するためのディテール。初期型(MIL-J-8279)には存在するが、MIL-J-8279B以降では排除された。
- ICSコード用ループ:両脇下に付けられた機内通信システムのコードを留めるためのフラップ。こちらもMIL-J-8279B以降では省略されている。
- ウインドフラップ:フロントファスナー部からの風の侵入を防ぐディテール。最初期型(MIL-J-8279)は上部が角ばっていたが、顎に干渉するためMIL-J-8279A以降は丸みを帯びたデザインに変更された。内部のインターライニングを固定するためにジグザグのステッチが施されている。

ウインドフラップ Image by acorn
CWU-45/Pへの移行
- MA-1は1950年代中頃の採用以来、1976年にCWU-45/Pが登場するまで アメリカ空軍のフライトジャケットとして使用された。

CWU-45/P Image by acorn
- CWU-45/Pはノーメックス(難燃性素材) を使用し、耐熱性や安全性を向上させたモデル。
- MA-1はパイロットの生命を守るために改良が続けられ、最終的にCWU-45/Pへと移行したが、地上整備員用として現在も活躍 している。
- そのスタイルはファッション界にも影響を与え、ミリタリーの枠を超えて広く受け入れられている。
ヴィンテージ市場での評価
- 初期モデルや「黒タグ」MA-1は流通が少なく、ヴィンテージ市場で高値で取引される

黒タグ Image by acorn
- 特にMIL-J-8279の最初期モデルは希少性が高く、フライトジャケットの中でも人気がある
- アルファ・インダストリーズをはじめとしたブランドが現在も復刻版を展開し、ファッションアイテムとしても定着している
参考
トップ画像 Image by acorn
*1 rushout
buzzrickson 1
buzzrickson 2
buzzrickson 3
waiper
いつだってミリタリアン
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