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カーハートが古着市場で隆盛を極めるまで

カーハートが古着市場で隆盛を極めるまで

はじめに:なぜ今Carharttが古着市場で注目されるのか 

アメリカ発のワークウェアブランドCarhartt(カーハート)は、その頑丈なダック地やデニム生地が使い込むほど味わい深く色褪せることで知られています。近年、この「経年変化の美学」が古着ファッションの潮流と合致し、カーハートの古着アイテムが世界的なブームとなっています。丈夫さゆえに流通量も多く、ショップが積極的に取り扱うことで街中でも見かける機会が増えました。本記事では、そんなCarhartt古着の価値がどのように高まり、トレンドとして定着していったのかを時代ごとに振り返ります。 

創業~戦前: ハートタグ伝説の始まり (1889〜1930年代) 

カーハートの歴史は1889年、デトロイトに始まります。創業者ハミルトン・カーハートは、わずか2台のミシンと0.5馬力の電動モーターを備えた小さなロフトでオーバーオールの製造を開始しました。当初は思うように売上が伸びませんでしたが、カーハートは鉄道で働く労働者たちのもとへ直接足を運び、現場の声を聞くという当時としては珍しい市場調査を行います。この地道な取材から生まれたのが、過酷な労働に耐えうるビブオーバーオールでした。「誠実な価格に見合う誠実な価値を(Honest value for an honest dollar)」をモットーに掲げたこの製品は瞬く間に評価を獲得し、ワークウェアの定番として定着していきます。 

事業は急速に拡大し、1910年までにサウスカロライナ州やジョージア州に紡績工場を、アトランタ・デトロイト・ダラス・サンフランシスコに縫製工場を構えるまでに成長しました。カナダのウォーカーヴィルやトロント、バンクーバー、イギリスのリバプール、フランスのパリにも拠点を広げ、ニューヨークには事務所と倉庫を開設するなど国外進出も加速します。1917年には、現在もカーハートを象徴するアイテムのひとつ「チョアコート」が発売され、ワークウェアブランドとしての地位を確立していきました。この時期に導入されたハート形のロゴタグは、品質の証として多くの労働者に親しまれるシンボルとなっていきます。 

定番アイテムの確立 (1940〜1950年代) 

第二次世界大戦後、アメリカの労働現場で定着したカーハートは、現在もヴィンテージ市場で高い人気を誇る代表作を次々と生み出していきます。1954年に「ジッパージャケット」として発売されたモデルは当初デニム素材で作られ、翌1955年にはブラウンのダックキャンバス版が登場しました。このジャケットは後に「デトロイトジャケット」と呼ばれるようになります(正式に改名されたのは1998年)。アイゼンハワージャケットを思わせる丈の短いシルエットに、ハンドポケット、ジップアップフロント、ウエストのアジャスターを備えたデザインが特徴です。同時期には、コーデュロイカラーとキルトライニングを備えた防寒仕様の「アークティックジャケット」も展開され、過酷な屋外労働に耐える一着として評価を高めました。これらのアイテムはいずれも、着用を重ねるほどダック地が色褪せ、持ち主だけの風合いを纏っていく点が、現在の古着市場での人気につながっています。 

ストリートへの進出 (1980〜1990年代) 

カーハートがワークウェアの枠を超えて広く認知されるきっかけとなったのは、1980年代のデトロイトやニューヨーク・ブロンクスの若者たちでした。厳しい冬を乗り切るための暖かく大きめのサイズ感を求めた彼らは、ハードウェアストアで手に入るカーハートのXXXLサイズに注目します。当時のファッションブランドがまだビッグサイズの衣料を扱っていなかったことも、カーハートがストリートで選ばれる後押しとなりました。 

1990年には、ヒップホップレーベルのトミー・ボイ・レコードが自社ロゴを刺繍したカーハートジャケットを800着購入し、プロモーションとして配布するという出来事が起こります。ハウス・オブ・ペインがミュージックビデオ「Jump Around」でウェザード・ダックのデトロイトコートを着用したことも話題となりました。さらに同時期、ウータン・クランやトゥパック・シャクール、ドクター・ドレーといったヒップホップアーティストたちがオーバーサイズのカーハートを着用する姿がミュージックビデオやスケートビデオに映り続けたことで、ワークウェアは世界的なストリートファッションのアイコンへと変貌を遂げました。 

ヨーロッパで生まれたもう一つの顔、Carhartt WIP (1989年〜) 

カーハートのストリートでの存在感が高まるのと時を同じくして、1989年にはドイツ人デザイナー夫妻エドウィン&サロメ・フェイによって「カーハート ワーク イン プログレス(Carhartt WIP)」が立ち上げられました。これはヨーロッパおよびアジア市場向けにライセンス展開されたストリートウェア部門で、本家のワークウェアをよりスリムなシルエット、ファッション性の高いディテールへとアレンジしたラインです。1990年代半ばにはフェイ夫妻が独自デザインの展開権を得て、スケートボード、グラフィティ、アンダーグラウンドミュージックといったヨーロッパのサブカルチャーと強く結びつきながら独自の地位を築いていきました。アメリカ本国のカーハートとヨーロッパ発のWIPという二つの流れが、それぞれ異なる文脈でブランドの裾野を広げていったことになります。 

現在:古着市場でのカーハート 

現代の古着市場において、カーハートはワークウェアというルーツを残しながらも、ストリートファッションの定番として揺るぎない人気を保っています。日本でも、色褪せや使用感を楽しむ「フェード」、長年の着用でくたびれた風合いを指す「ボロ」といった価値観とともに評価され、著名人の着用も人気を後押ししています。 

ヴィンテージとして選ぶ際は、タグの表記やMade in USAかどうか、ユニオンメイドの表記の有無などが年代やモデルを見分ける手がかりになります。丈夫な生地が長年の実用を経て独特の色落ちを纏った一着は、ワークウェアとしての機能美とストリートカルチャーが積み重ねてきた歴史の両方を物語る存在だと言えるでしょう。 

参考

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