01 Magazine
【ブランドの歴史】Levi’s ジッパーフロントモデル誕生から進化のタイムライン

1950年代:501ZXXの誕生と東部市場への進出
1954年 – Levi’s初のジッパーフロント・デニム「501ZXX」が登場した。もともとLevi’sの代表モデル501はボタンフライ仕様だったが、アメリカ東海岸の顧客にはボタン式に馴染みが薄かったため、より扱いやすいジッパー式が求められた。501ZXXは従来の501XXとシルエットや生地など基本的な特徴をそのままに、フロントだけをジッパーに変更したモデルだ。これは東海岸での販路拡大を狙った戦略的モデルで、発売当時は店頭に501(ボタンフライ)と501ZXX(ジッパーフライ)が並び、好みに応じて選べるようになっていた。結果として501ZXXは東海岸のみならず全米で受け入れられ、Levi’sデニムがワークウェアからファッションアイテムへと広がるきっかけの一つとなった。ボタンフライの501と比べ生産期間が約12年と短かったため流通本数も少なく、ヴィンテージ市場ではレアな存在になっている。
1960年代前半:ファッション化と防縮デニム「551ZXX」の登場

1960年代初頭 – デニムが若者文化に浸透し始める中、Levi’sはさらなる改良を進めた。1961年頃、新たに「551ZXX」というモデルが誕生した。551ZXXはLevi’sで初めて防縮加工(プリシュランク)デニムを採用したジッパーフライのデニムで、洗濯後の縮みを抑え扱いやすくした画期的なモデルだった。従来の501XXや501ZXXは未防縮(防縮加工なし)の「XXデニム」を使っていたため、購入後に縮みを見越してサイズを選ぶ必要があったが、551ZXXはその手間を軽減しより気軽に履けるデニムとして登場した。Levi’sが本格的にファッションシーンへの対応を図ったこの時期、551ZXXは後の505へと進化していった。
1960年代後半:「502」への転換と505の誕生

1966年 – デニムのディテールに変化が現れた年。Levi’sはモデル番号を整理し、501ZXXから「502」へ品番表記を変更した。実際のデニムでは移行期にパッチ(ラベル)に「502」と刻印し、その上に小さく旧番号の「501Z」を併記したダブルネームのものが存在する。これは501ZXXが正式に「Levi’s 502」として扱われ始めたことを示し、501(ボタンフライ)とは別のジッパーフロント定番モデルとしてラインナップされたことになる。同じ1966年頃、先述の防縮モデル551ZXXも品番を「505」に改めた。こちらも移行期にはパッチに「505」と旧番号「551Z」を併記したダブルネームが見られ、Levi’sデニムにおけるプリシュランク・ジッパーモデルが正式に505として確立された。
1967年 – いよいよ「Levi’s 505」が本格的に世に登場した。この505は、それまでの開発の集大成として防縮デニム+ジッパーフライという革新的ポイントを併せ持ち、当時のトレンドに合う洗練されたストレートシルエットを備えていた。発売当初から都会的な着こなしに合わせやすいデニムとして評判を呼び、東海岸のアイビーファッション層にも受け入れられて全米で爆発的ヒットを記録した。501譲りのタフさとシルエットに加え、ジップによる扱いやすさと防縮加工によるサイズ管理の容易さから、505は50年以上にわたり愛され続けるLevi’sのロングセラーモデルとなった。一方で先代の502(旧501ZXX)は生産期間が短く、505登場後は徐々に姿を消していった。こうしてLevi’sのジッパーフロント系ラインは505に集約され、ボタンフライの501と並ぶブランドの二本柱へと成長していった。
1970年代:カルチャーアイコンとしての505
1970年代 – ファッションとして定着した505は、やがてポップカルチャーの象徴的アイテムにもなった。1971年に発売されたローリング・ストーンズのアルバム『スティッキー・フィンガーズ』のジャケットアートワークには、505のジッパーフロントがクローズアップされて登場した(参考: Denim Celler.)。さらに1970年代後期のパンクロックシーンでは、ニューヨーク出身のラモーンズをはじめ多くのロックミュージシャンがこぞって505を愛用し、革ジャンとデニムのスタイルはユースカルチャーの象徴になった。このように505は音楽やサブカルチャーと結び付き、「お洒落な人の定番デニム」としての地位を不動のものにした。年代を超えて受け継がれる505の人気は日本でも再燃し、現在でも501と並ぶLevi’sのアイコンとして進化を続けている。
まとめ
1954年誕生の501ZXXから始まったLevi’sのジッパーフロントモデルの歴史は、東海岸への進出や若者文化の変化に応じて進化を遂げた。ボタンフライの501から派生したジッパーモデルは、防縮加工による履きやすさも取り入れられ、502や505といった名作モデルになった。Levi'sのモデル戦略の特筆すべき点は「より便利で現代的なデニムを求める時代の流れ」がありつつも、伝統と革新を両立させ、多くのファンを惹きつけた点にある。
参考
- サムネ:Image by acorn_vtg